加齢による難聴と補聴器

伝音性難聴と補聴器
中耳炎や鼓膜の損傷など、外耳から中耳にかけて音を伝える器官の障害が原因の伝音難聴の場合は、薬物投与や手術などの治療で改善する場合があります。治療が難しい場合でも、伝音難聴は音を聞き分けたりする器官には障害がないため、補聴器で適切な音を内耳に届けることができれば聞こえが改善する場合が多いとされています。伝音難聴向けとして、鼓膜に音を届ける通常の気導補聴器の他に、最近では耳の軟骨に振動を与える軟骨伝導補聴器も登場しています。

感音性難聴と補聴器
加齢による聴力低下に代表される感音難聴の場合、内耳以降の音を感じたり聞き分ける器官に問題が起きているため、ささやき声など高い音が聞こえない、声は聞こえているのに何を言っているのかがわからないといった症状になります。その結果、人との会話での聞き間違いや聞き返しが多くなってきます。伝音難聴の場合とは違い、感音難聴では、単純に音を大きくするだけでは症状が改善しないという問題が起こります。
高い音、低い音―どんな音が聞き取りにくくなっているのか?どの周波数帯の音を増幅する必要があるのか?感音難聴の場合は、補聴器を使用する人の聞こえの状態はもちろん、生活環境など周囲の状況も考慮して補聴器をきめ細かく調整しなければなりません。

補聴器の性能と調整
最新の補聴器には精密なコンピュータが内臓されており、使う人一人ひとりの聴力や聞こえの状態に合わせてきめ細かく調整することができます。その人が聞こえていない周波数帯域だけを選んで増幅したり、周囲の雑音を抑えて言葉を聴き取りやすくしたりといったことができるので、使う人に合わせてしっかり調整することで、感音難聴の症状改善にかなりの効果が期待できます。
ただし、一人ひとりに合わせた補聴器の調整を行うには専門知識と技術が必要です。通販などで買った補聴器や集音器を使わずにタンスの肥やしになっている、という話もよく聞きますが、聞こえは人により千差万別で、単に音を大きくすれば聞こえるというものではありません。補聴器の効果を上げるためにも、専門技術を習得した補聴器販売店で的確な調整を行うことがとても重要です。

ある調査では、聴力の低下に自覚してから補聴器を装用するようになるまでに4~6年がかかるというデータがありました。自分の聞こえが衰えていると感じていながら、何年も何もせず放置している人が多いということです。難聴は放置していても自然に治ることはありませんが、補聴器を使うことで聞こえにくさを改善できる可能性があります。

補聴器の可能性
近年、補聴器の開発はめざましく、より高性能で使いやすく、快適で目立たなくなっています。
新たな機能も次々と登場。補聴器がスマートフォンと繋がって通話や音楽を楽しんだり、補聴器自体もカラフルでスタイリッシュに進化しています。最近では、AI機能で補聴器が周囲の環境や使う人の好みを判断して自動で音を調節してくれたり、音声翻訳や転倒検出機能がついたものまで登場しています。また、スポーツや外での使用で気になる防水性能についても年々向上しており、防塵・防水の国際保護等級の最高レベル「IP68」の補聴器も登場しています。
補聴器は「聞こえを補う」だけの器具から、より豊かで充実した毎日のためのツールに進化しつづけています。ご自分のためだけでなく、生活を共にする家族や周囲の人たちと楽しい人生を過ごすためにも、一度補聴器を試してみてはいかがでしょうか。