一方、感音性難聴は、内耳や聴神経といった「感音器」つまり音を感じ、聞き分ける器官の障害が原因で起こります。症状としては、一般的に、高い周波数の音が聞こえなくなってきます。電話の呼び出し音や体温計の電子音などが高い周波数の音の代表的なものです。また、全体にくぐもったような、はっきりしない感じに聞こえるようになります。また、小さな音は聞こえにくくなる一方で、大きな音はうるさく感じるようになってしまいます。さらに大きな特徴として、音に含まれる微妙な周波数の違いが分からなくなり、ぼやけたり、割れたり、歪んだりした感じの音に聞こえることがあります。それに伴い、言葉の違いが分りにくくなります。会話、コミュニケーションにとって最も大きな影響がある症状だといえます。有毛細胞が全体的に損傷していくことによって起こるため、多くの高齢者にはこの症状があります。ただし、有毛細胞は20歳をピークに数十年かけて徐々に損傷していくため、言葉の聴き取りも、少しずつ落ちていきます。したがって、ほとんどの高齢者には、自分の言葉の聴き取りが悪くなっているという自覚がありません。
蝸牛の中にある有毛細胞は、一度ダメージを受けてしまうと、現在の医学では再生することは難しいため、感音性難聴は医学的な治療は困難だと言われています。
感音性難聴の主な治療方法としては、補聴器や人工内耳などがあります。補聴器の技術の進歩には目覚ましいものがあり、使う人の聴力や周囲の環境に合わせて音声をきめ細かくデジタル処理することで、騒がしい場所でも話し相手の声をよりはっきりと届けてくれる機能を持った製品が主流となっています。また、テレビや携帯電話の音声を直接補聴器で聞くことができたり、使用する環境で聞こえ方を切り替えることができたりといった付加機能を搭載した器種も数多く登場しています。補聴器は、単に聞こえをサポートするだけでなく、毎日の生活をより豊かにするためのツールとして活躍の場を拡げています。