補聴器と価格

補聴器と価格

初めて補聴器を購入する人、補聴器の購入を検討しはじめた人、そして、補聴器についてあまり知識のない人にとってとても気になるのが「補聴器と価格の関係」ではないでしょうか。

デジタル補聴器の価格

「補聴器はいくらぐらいするの?」「高い補聴器と安い補聴器の違いは何?」「高い補聴器ほど良く聞こえるの?」「安い補聴器は買わない方がいい?」など、補聴器の価格については多くの方がさまざまな疑問を抱いていることでしょう。
ここでは、補聴器の価格について、また、高い補聴器と安い補聴器の違いなどについて説明します。
JapanTrak2018によると、現在のデジタル補聴器の価格の平均購入金額は15万円でした。
補聴器は安いもので片耳7万円位から、高いものでは片耳で50万円以上する製品もあります。この価格を高いと判断するか、妥当と判断するかは人それぞれの価値観にもよりますが、聞こえることの素晴らしさや人と話をすることの楽しさというお金では手に入れられないものが、補聴器の助けによって手に入るという意味では、その効果が実感できるのであれば、補聴器は決して高いものではないのかもしれません。 そもそも補聴器の価格はどんな要素から構成されているのでしょうか。補聴器の価格は大きく分けると、[補聴器本体の価格]と[フィッティングや調整の技術料]とで構成されています。補聴器は本体だけを買えばすぐによく聞こえるようになる訳ではありません。高性能な補聴器も、使う人の聴力や聞こえの状態に合わせてしっかりとした調整を行わないと本来持っている性能を充分発揮することができません。そのため、補聴器にとって調整の作業は絶対欠かせないものなのです。

補聴器本体

これまでの説明のように、デジタル補聴器は、入って来た音を周波数ごとのチャンネルに分けて細かく分析し、騒音と音声を区別して騒音を抑えながら言葉と聞き取りやすくする機能や、使う人の聴力や聞こえの状態に合わせて柔軟に調整できるといった基本的な機能以外にも、最先端の技術を駆使したさまざまな機能が搭載されています。また、補聴器は体の機能の一部を補うために最先端技術を駆使して開発製造された精密な医療機器なので、厳格に管理された環境の中で開発・製造されます。
デジタル補聴器は、音を拾うマイク、音を増幅するアンプ、音を出すレシーバーというパーツで構成されています。補聴器のあの小さな本体の中には、最新鋭の高性能コンピュータが組み込まれているということもできます。
中でも一番大切な補聴器の心臓部は、複雑なデジタル信号処理を瞬時に行うマイクロチップです。マイクロチップの開発には、莫大な費用と長い年月、多くの人手が必要になります。一説によると、高機能補聴器のマイクロチップを独自に開発するためには、数億円から数百億円程度の費用がかかるとも言われています。
ワイデックスの製品を例にあげると、IC(集積回路)や電気回路の設計とその部品の開発に取り組むエンジニア、生産や機械設計の担当者、オージオロジスト(聴覚医学の専門家)、音響の専門家、そして、ソフトウェアのスペシャリストなど、さまざまな分野の数多くのプロフェッショナルの手によって、一台の補聴器が生み出されているのです。また、製品化されるまでに、数多くの製品テストが行われ、何十台もの試作器がつくられます。このように、小さな補聴器には、メーカーの長年にわたる努力や経験や技術力、開発にかかる費用など、あらゆるものが詰め込まれていると言えるでしょう。補聴器の価格を高いと感じる人もいらっしゃるようですが、そういうことを考えると、補聴器の価格も一概に高いとは言えないのかもしれません。

補聴器の価格の主な内訳

調整に関する技術料

いくら高性能な補聴器であっても、そのままでは単なる高価な器械に過ぎません。
補聴器は、聴力が低下した人の耳の機能を補うためのものであり、使う人にとって快適で、扱いやすく、何よりも満足できるだけの効果を提供できるものでなくてはなりません。
補聴器は、購入する前はもちろん、購入してからも使う人の聴力や聞こえの状態、日常生活の状況、ニーズなどに合わせてきめ細かい調整を繰り返す必要があります。デジタル補聴器は、使う人に合わせて非常に緻密に調整することができるという特長を持っています。だからこそ、その特長を最大限に生かすためにも、販売店での調整のプロセスが非常に大切になります。
補聴器は、使う人に合わせて細かく調整を繰り返していくことで、初めて製品としての機能を発揮します。そういう意味では、器械と調整が一緒になって「補聴器」という製品を成立させているということもできます。言い換えると、補聴器は調整なくしては成り立ちません。ですから補聴器の価格には調整のための技術料が含まれているのです。どの周波数の音が聞こえにくくなっているのか、言葉の聞き取りの能力はどの程度なのか、どういった環境で生活しているのか、といった使う人の聴力や聞こえの状態、生活環境などをしっかり把握した上で、どの周波数の音をどの程度増幅させると聞き取りやすくなるのか、どういう増幅のパターンを心地良く感じるのか、どういう感じの音を好むのかといった使う人のニーズに合わせて補聴器を調整していくのです。少ない調整の回数で満足できる聞こえが実現する場合もありますし、調整をたくさん重ねた上でやっと快適に聞こえるようになる人もいます。
さらに、毎日の生活の中で補聴器を使い続けていくにつれて、聞こえにくい場面や聞きたい音が変化してくくる場合もあります。そういう意味では、購入した後も、使い続けながら定期的に細かい調整を繰り返すことで、より自分の好みにぴったり合った補聴器にしていくことが大切になります。
デジタル補聴器の調整は、コンピュータに繋いで専用のソフトを用いて行いますが、調整の技術には専門家の経験とノウハウが生かされます。コンピュータで制御されたハイテク機器ともいえるデジタル補聴器が持っている機能を最大眼引き出すためには、人の持つ経験や知識、技術力が欠かせないのです。医療機器である補聴器は、文字通り耳の助けをして聞こえをサポートするためのツールです。ですから肝心のところは人の手に負うところが大きいのも当然なのかも知れません。
本当に自分にあった補聴器は、調整を繰り返していくことで"つくりあげて"いくものです。そのためには、一緒に"つくりあげて"くれる補聴器販売店の役割が非常に大切になります。「補聴器選びはお店選び」という言葉もありますが、補聴器を快適に使い続けていくためには、信頼して長く付き合うことのできる販売店の存在が欠かせません。

高い補聴器と安い補聴器

多くの人が抱く疑問として、「高い補聴器と安い補聴器はどこが違うのか」というものがあります。確かに、値段の高い補聴器も安い補聴器も見た目はほとんど同じです。そうなると違いは中身ということになるのですが、では、中身がどう違うのでしょうか。
補聴器の価格差は、補聴器が備えている基本的な性能と、搭載されている機能の違いということができます。価格の高い補聴器は心臓部であるマイクロチップの能力が優れており、高度な音声処理が可能になるため、周囲騒がしい場所などより厳しい環境でも快適な聞こえを届けることができます。また、雑音を抑制するための最新の機能や、自動的にハウリング(ピーピー音)を抑える機能、自分の声がより自然に聞こえる機能、そして、一人ひとりの聴力にあわせて音質を、きめ細かく調整できる機能等が搭載されています。さらに、ワイデックスの最新シリーズでは、使う人の好みの音をその場で反映できたり、音の好みを学習して使えば使うほど聞きやすくしてくれたりするAI機能が搭載されています。また、スマホとつながり補聴器で直接通話したり、音楽を楽しんだりすることができる製品もあります。
一般的に耳あな型補聴器は一人ひとりの耳の形状や「きこえ」の程度に合わせて、オーダーメイド(手作り)で製造されますので、耳かけ形に比べ多少高価になります。つまり、パソコンの価格が、搭載しているCPUの処理速度の違いや、メモリの容量の違いなどによって変わってくるように、補聴器もその心臓部であるマイクロチップの性能によって大きく価格が変わってきます。価格の違いは、ある面性能の違いといえます。では、その違いが実際の聞こえにどの程度反映するのでしょうか?
性能の差は、補聴器を装用する環境によっては聞こえの差となって現れます。静かな場所での聞こえでは顕著な差が出ることはあまりないようですが、周囲の環境によっては聞こえに差が出てくる場合があるようです。特に、騒がしい騒音の中では、言葉の聴き取りに違いが出るようです。
ただし、どんなに高い補聴器でも聞こえの程度や補聴効果、評価には個人差がありますし、高価な補聴器がすべての人にぴったりと合う訳ではありません。大切なことは聴力や聞こえ、補聴器の使用目的に合わせて、納得のいく補聴器を選ぶことです。そのためには、まず、ご自分の聞こえの程度を知ることが大切です。その上で、どんな時に困っているのか、また、どんな時に補聴器を装用し、改善したいのか等を専門医や補聴器店に伝えて、相談しながら自分の聞こえに合った補聴器を選ぶようにしましょう。

補聴器の耐用年数

毎日使用する補聴器ですが、寿命はあるのでしようか。補聴器は耳の穴の中に入っていたり、耳の後ろに掛けていたりと、絶えず体に触れています。そのため、汗や水分、ホコリといったものにさらされている状態になっています。そういう意味では、補聴器はかなり過酷な環境で休みなく働いているということができます。 障害者総合支援法における耐用年数は5年が目安とされています。しかし、使い方やメンテナンスの仕方によって耐用年数は大きく変わります。メンテナンスが悪ければ1年や2年で故障してしまう場合も珍しくありません。一方、大切に使っている人の中には、10年以上、故障がなく使われている人もいます。また、補聴器は耐用年数以外に聴力の変化によっても補聴効果が十分得られなくなる場合があります。多くの補聴器は多少の聴力の変化にも対処できるようになっていますが、適応範囲を超えた変化には対処できない場合もあります。
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