1⃣ 定常雑音を低減する機能
エアコンの音やパソコンなどの機器のファンの音、一定速度で走行する乗り物の中で聞こえる走行音、人が大勢いる広い空間での雑踏音などは、音の大きさが時間的に変化しない一定の音に聞こえます。このような音を「定常雑音」といいます。定常雑音には、聞き取るべき情報はありませんので、補聴器はこれを低減します。
2⃣ 大きさが変化している音を低減する機能
大きさが変化している音を低減する機能
定常雑音以外の音は、大きさが変化している音になります。それらは、街の交通雑音、機械が作動している音、人が作業している音、そして人の声などです。
聞き取りを最優先するのは人の音声なので、補聴器はこれらの音の中から人の音声以外の音を低減します。正確には、その音の性質・挙動が人の音声の性質・挙動と明らかに一致しない音を人の音声以外の音と判断して低減します。
3⃣ 指向性機能
特定の方向からの音を優先して聴取するしくみを「指向性処理」と呼びますが、この目的もノイズリダクションのひとつに含まれます。補聴器が最優先したい音は人の音声ですが、音声にも聞き取りたい音声と、これを阻害する音声とがあります。大勢の中で会話をする場合に、話し相手の音声の聞き取りを、横や後ろの別の人たちの会話音が邪魔することがあります。このような状況の改善に有効なのが、前方からの音を最優先してそれ以外の方向からの音を低減する指向性処理の方法です。補聴器の指向性機能は、前方の音を優先的に増幅し、前方以外の音を減衰させることで、周りに会話や雑音があっても「一番聞きたい」正面の人の音声を優先的に聞き取りやすくします。
さらに、正面からの音声の聞き取りを阻害するような大きな音が周囲にある場合、その音の方向を特定して、その方向からの音を低減させます。この処理を連続的に動作させることで位置が移動している雑音も低減することができます。
4⃣ 内部雑音を低減する機能
静かな環境で会話もないような場面では、補聴器自体が発生する内部雑音や周囲の小さな雑音だけが聞こえます。特に、最近のデジタル補聴器は小さな音をより大きくする増幅処理をするので、静かな環境ほど増幅器の増幅度を高めるため、内部雑音や静かな雑音も高く増幅されて耳障りに感じることがあります。
これを防ぐために、一定レベル以上の音の入力がない時には補聴器の増幅度を下げる処理を行います。この結果、静かな環境においては補聴器は増幅を停止し、より静かになる効果があります。
5⃣ 衝撃音を低減する機能
補聴器を使い始めた難聴者が、どのような音を不快に感じるかを調査した結果では、ものを叩く音、壊れる音、泣き声、食器・紙を扱う音などの報告があります。これらの音を分析すると、瞬間的に立ち上がる音、すなわち衝撃音であることがわかります。補聴器は、この衝撃音による不快感を取り除くために、音の衝撃的な成分を抑制する処理を行います。これにより、補聴器の長時間装用による疲労を軽減し、より快適な装用をもたらすことができます。
6⃣ 風雑音を低減する機能
補聴器はさまざまな屋外環境でも使用されるので、風に当たった場合には風切り音も増幅してしまい、とても大きく不快な音になり、同時に必要な音の聞き取りの妨げにもなります。風雑音はその挙動の特徴が比較的明確なため、補聴器はその発生を確実に検知して、軽減処理をすることができます。