加齢性(老人性)難聴の原因
一度劣化したり減少したりしてしまった有毛細胞は元に戻ることはありません。老人性難聴は医学的な治療が困難だといわれるのはこのためです。
加齢による聴力低下の場合、一般的にはまず高音域から聞こえにくくなり、左右の聴力は同じレベルで低下していきます。しかし、比較的周波数の低い「あ、い、う、え、お」といった母音については、それほど聴き取る力が低下しないので、自分ではあまり聞こえにくく感じません。このため、本人よりも周りの方が先に気づくことが多いといわれています。聴力が低下しはじめる時期には個人差がありますが、一般的には40歳位から徐々に低下しはじめるといわれています。
加齢性(老人性)難聴には、以下のような特徴があります。
有毛細胞は高い音を感じる順に蝸牛の入り口から並んでいるため、加齢性(老人性)難聴になると高い音から聴き取りにくくなります。音の高さは、周波数で示しHz(ヘルツ)という単位を使い、数字が大きければ大きいほど高い音になります。子どもが聞くことができる周波数は20Hzから20,000 Hzまで、成人になると16,000 Hzまで、高齢者では5,000 Hzまで低下します。若い人しか聞こえない「モスキート音」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。英語で蚊のことを「モスキート(mosquito)」と言いますが、ブーンと蚊が飛んでいるような高い音のことを「モスキート音」といいます。成人のほとんどが、18,000 Hzのモスキート音は聞こえないといわれています。
加齢性(老人性)難聴は、老化に伴い少しずつ進行するため気がつきにくいのが特徴です。分かりやすいチェック方法は、テレビの音量の確認です。以前よりも音量を上げるようになったり、家族からテレビの音がうるさいと言われたりしたら、加齢性(老人性)難聴の可能性があります。また、細かいチェックポイントとしては、高い音や小さい音が聞こえるかどうかです。ピピッという電子音、携帯電話の着信音が聞こえない、女性や子どもの声が聴き取りにくい、さ行、か行、は行の聞き分けが難しい、このような症状があれば耳鼻科を受診して聴覚検査を行うといいでしょう。